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みつけるつづける、暮らしのヒント

35歳の壁の向こう側から /子育て中のわたしが思うこと

最近、“35歳の壁”という言葉をよく目にします。結婚、妊娠、出産、キャリア── 特に女性にとってのこの年齢は、何のために働き、何のために生きるか、これからの舵取りへの不安が一気に押し寄せてくるタイミングです。

わたしは30歳と34歳で出産し、今は5歳と1歳、ふたりの男の子の母親です。つい先日、36歳になりました。

もし、いま“35歳の壁”の前で立ち尽くし、人生の選択に迷っている方がこの記事にたどり着いてくださったなら、こんな人間もいるのだと一例として読んでいただけたら嬉しいです。

後悔と納得のあいだを行ったり来たりしながら、今のわたしがある。今日はそんな、迷いながら歩いてきた日々を、少しだけ振り返ってみたいと思います。

子どもが嫌いだった子ども時代、母になった戸惑い

正直に言うと、わたしは子どもが好きではありませんでした

4月生まれで成長が早く、しっかり者のお姉さんポジションを任されることが多かったわたしは、子どものころから“子どもらしい”振る舞いを自分に許してきませんでした

大人になってからも、騒ぐ子ども、わがままな子ども、空気を読まない子ども──そんな“子どもらしい子ども”を見ると、冷ややかな目線を送ってきました。

だからこそ、結婚して数年後に子どもを授かったとき「我が子を愛せるだろうか」とすこしの不安がよぎりました

そして実際に生まれてきた息子は、まさに私が苦手だった“子どもらしい子ども”そのものでした。

喜怒哀楽のトレーニングをし直しているわたし

彼らと暮らす毎日で、わたしはいま「感情の出し方」をトレーニングしなおしている気がします。

怒る、泣く、笑う、甘える──それを全身でぶつけてくる息子にどう応じればいいのか、初めての子育ては戸惑いました。自分が感情を抑えて大人ぶっていた子ども時代に、真正面からぶつかる経験が足りなかったのかもしれません。

いろいろ経て、今ではわたしは子どもに対しても怒ったり泣いたり、感情100%で接しています。あとでおとなげなかった…と軽く反省することも(笑)日々言い合いが絶えないので、眠る前には必ず抱きしめてリセットすることだけは決めています。

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育児はとても個人的な営みです。SNSを開けばそれらしいノウハウが並んでいますが、子どもの性格も家庭環境も親の気質もまるで違う

そこに答えを求めて正解を探すより、それぞれの家族にとって「心地よい形」を見つけ作り上げていくほうが、ずっと大切だと感じています。

いつもにこにこ穏やかなお母さんを見かけると、すごいなぁと思う一方で、無理してないか心配になることも。

子育てを選んで、仕事をあきらめた感覚もある

フリーランスデザイナーとして軌道に乗りはじめた20代後半。深夜まで作業を続けることも珍しくなく、納期があれば寝る間を惜しんで仕事をしていました。でも今は、子どもの体調や明日の保育園の準備を考えると、そうはいきません。

急な発熱や呼び出しに備える日々の中で、ひとりで大きな案件を抱えることにも不安があります。

以前のような働き方は、体力的にも環境的にも難しい —— 子育てを選んだことで、「仕事を諦めた」という感覚は正直なところ拭いきれません

稀に子育ても仕事もバリバリこなすスーパーウーマンがいますが、わたしにはその素養はありません。だからこそ、「動かせない条件の中で自分が納得できる選択をすること」に価値を見出しています。これはおそらく子育てをしなければ得られなかった知見です。

35歳は〝選び直し〟のタイミング

「子どもがいなければ……」と考える日もあれば、「この子がいてよかった」と心から思う日もある。すべてを手に入れることはできないので、自分が選んできたものをしっかり抱えて進むしかありません。

あるとき義母さんがふと口にした「子育ては、人生経験としてやってよかったと思ってる」という言葉が、いまのわたしの支えです。いつか同じように思えるように、日々迷いながらも、子どもたちとの日常を重ねています。

育児を通して養われるのは、段取り力、柔軟な対応力、観察力、共感力、そして人を育てる力。

子育てはブランクではなく、仕事をしているだけでは得られないスキルを磨くための時間である。そう評価される世の中になることを、子育てを選んだ一人として、願っています。